こんばんは!
アメリカンレザーカービング教室の講師のYoshikiです。
レザークラフトを始めたばかりの方にとって、革の厚みを計算してアイテム作りをするのは難しいと思います。どのパーツをどのくらいの厚みにすればよいのか、最初はなかなか分からないですよね。
私が公開している型紙には厚みを記載していますが(すいません、公開当初にアップした型紙には厚みは記載していません)、それはあくまで参考程度に考えてください。
理由は、革には硬いものや柔らかいものがあり、一概に「この厚みにしなきゃいけない」と決めるのは難しいからです。
そこで今回は、「厚みの考え方」について解説していきます。

カービングする革の厚みについて
以前、分厚い革にカービングを施した高級財布が販売されているのを見たことがあります。
おそらく、カービングしている革の厚みは4.0mm近くあり、
「厚い革に深いカービングを施して、立体的で迫力のある作品に仕上げました」
という売り文句でした。価格も10〜15万円ほどだったと記憶しています。表の革だけで4.0㎜程度だったので、財布全体の厚みは、折り曲げた時に4~5cmあったのではないかと思います。
おそらく多くの人は、「厚い革は高級で価値がある」と感じるでしょう。確かに、厚い革を使うことでカービングの立体感が増し、迫力のある仕上がりになります。
また、厚い革であれば強くカービングしても革が破れる心配はありません。だから強く打刻することで刻印が深く入り、結果的に「彫りが深い迫力のあるカービング」が完成するのです。
しかし、本当にそれが「質の高いカービング」と言えるのでしょうか?
薄い革に彫ることで起こる失敗
この「レザーカービングの失敗あるある」で紹介した通り、薄い革にカービングをする場合、こんな風に革に穴が空いたり破れたりする事があります。
なので、厚い革にカービングをした方がこのような失敗をする可能性はなくなるし、作業効率も上がるので、可能なら私もある程度厚みがある革にカービングをしたい、というのが本音です。


「厚い革=高価」は本当か?
実は、革の仕入れ価格は厚い革も薄い革も基本的に変わりません。
むしろ、薄い革は「漉き加工」が必要になるため、加工費がかかり、結果として単価が高くなることもあります。そのため、「厚い革だから高価」というのは必ずしも正しいわけではありません。
また、財布の内部パーツまで厚い革で作ると、全体の厚みが増してしまい、使いにくくなることもあります。
SNSで分厚いコバをキレイに磨き上げた財布を見たことがあります。
確かに分厚いコバをキレイに磨き上げた場合、コバだけを見ると美しく魅力的に見えるかもしれません。でも、それが財布として本当に実用的かどうかは考えどころです。
「厚い財布」は使いにくくないか?
例えば、分厚い財布をポケットに入れたとき、邪魔になったり、バッグの中でかさばったりしませんか?
もちろん、厚みが好きという方もいますが、「厚い革=価値」があると考えて購入した人が、使いづらくて後悔することもあるかもしれません。
個人的な意見ですが、「厚い革だから価値がある」「厚い革のカービングの方が迫力があって魅力的」という考えには、私は反対です。
実際、2.0mmあれば十分に立体感のあるカービングが可能ですし、財布の内部パーツにカービングを施す場合は、1.2mmの革を使うこともあります。
薄い革にカービングを施すには高度な技術が必要ですが、だからこそ価値があると考えています。
私の厚みの考え方(財布を作る場合)
では、私が財布を作る時に、どのように厚みを設定しているのか、具体的に説明しますね!
表の革:2.0㎜前後を推奨

財布の表面はダメージを受けやすいですし、「財布の形を保つ」という点でも、ある程度の厚みが必要です。
ですが、厚くなりすぎると財布として使いにくくなる為、注意が必要です。
写真の財布は、約1.8㎜で作っています。ハーマンオーク社のツーリングレザーはとてもしっかりした革なので、この厚みでも全く問題ありません。
カードポケット:1.2㎜前後

カードの出し入れによる負荷を考慮すると、薄すぎるのはNGです。
革が厚すぎると、カードを入れた際に、かなり分厚くなりますし、カードの出し入れがしにくくなる為、1.2㎜前後が妥当ではないかと思います。
小銭入れ:1.5~1.8㎜

コインの圧迫による形崩れを防ぐため、適度な厚みが必要です。
また、ホックなどの金具を取り付けている場合は、開閉によって革がダメージを受けますので、その点でもある程度の厚みが必要です。
金具付きのフタ(財布のフタ):3.0㎜前後

フタ部分も、ホックなどの金具によるダメージを防ぐ為、ある程度の厚みが必要です。
私は、貼り合わせて厚みを確保する場合が多いです。
このように、パーツごとに最適な厚みを選んでいます。
ただし、これは革漉き機があるからこそできることですよね。
革漉き機がない場合の厚み調整
私はレザークラフトを始めて5年後に革漉き機を導入しましたが、革漉き機はかなりの高額機械ですので、導入にはかなり迷いました。
それまでは、半裁を購入する時に、
- 半分を2.2mm(表革用)
- もう半分を1.2mm(内部パーツ用)
といった具合に、購入時点で厚みを調整していました。
革ショップによっては、下の画像のように購入画面で革の分割や厚みを指定できますので、こういうサイトで購入すると楽ですよね。


初心者の方は革漉き機を持っていないことが多いので、購入時に適した厚みの革を選ぶのが最適ではないかと思います。
革漉き機の導入を考えるなら


もし本格的にレザークラフトを続けるつもりなら、革漉き機の導入を検討してもいいかもしれません。
私の場合、もう革漉き機がないと、革製品作りはできません。それぐらい重宝するアイテムです。
私はニッピのNP-1を使っていますが、他のメーカーについては詳しくないので、購入を検討する際はしっかりリサーチして選ぶことをおススメします!
革漉き機は高価な道具なので、慎重に決めましょう!
まとめ
革の厚みの選び方は、単に「厚い方が価値がある」と考えるのではなく、使いやすさやデザインに合わせて最適な厚みを選ぶことが重要です。
特に初心者の方は、厚みにこだわりすぎず、使いやすいアイテム作りを意識してみましょう!
では、今回のブログは以上です!また次回の記事でお会いしましょう。