こんばんは。ST工房です。
以前、「ペンマニア向けペンケースの作り方」というブログを書きましたが、今回は少し方向を変えて、一本だけを収納するためのペンケースを作ってみました。

文房具が好きな人って、日本だけじゃなくて世界中にいるんですよね。
以前公開したペンマニア向けのペンケースも、ありがたいことに海外の方からいくつかご注文をいただきました。
そして、こんな嬉しいレビューまでいただきました。

日本語にすると、
「とても丁寧に作られていて、説明通りの商品です!
外出先で活動するアーティスト兼ライターである私にとって、持ち歩く道具を入れるのに最適です。」
とのこと。
いや、本当にうれしいですよね。
自分が工房でひとつひとつ作ったものが、海を越えて誰かの仕事や生活の中で実際に使われている。
こういうレビューをいただくと、「また作ろう」と思えます。
今回は一本だけを収納するペンケース
というわけで、今回作ったのはこちら。



一般的な筆箱タイプではなく、お気に入りのペンを一本だけ収納するためのレザーケースです。
「何本も持ち歩く必要はない」
「お気に入りの万年筆を一本だけ大切に持ち歩きたい」
そんな人には、一本差しという形がちょうどいいんじゃないかなと思っています。
今回は、当工房でも人気のスタンピングが施されたモデルと、僕自身も大好きなイタリア・テンペスティ社のレザーを使ったモデル。この2種類を作りました。
こうやって色とりどりのペンケースを並べてみると、自分で言うのもなんですが……
かわいいというか、お洒落というか。
結構いい感じに仕上がったんじゃないでしょうか。
同じ形でも、革の色や表情、スタンピングの柄が変わるだけで、かなり雰囲気が変わります。
これもレザー製品の面白いところですよね。
商品の細かな仕様や、このペンケースの魅力についてはBASEの商品ページに記載していますので、興味のある方はそちらもぜひご覧ください。
作り方の話を少し…
このブログを読んでくださっている方は、商品そのものよりも、
「それ、どうやって作ってるの?」
という部分に興味がある方のほうが多いと思います(笑)。
なので、ここからは少しだけ立体成型について紹介します。
今回の一本差しペンケースでポイントになるのが、内側の立体的な形です。
ペンを収納する部分が平らではなく、ペンの形に合わせてふっくらと立体になっています。

この形を作るために使うのが、いわゆる絞り型です。

昔であれば、こういった立体成型をするためには木材を削って木型を作るのが一般的だったと思います。
もちろん今でも木型には木型の良さがあります。ただ、今は3Dプリンターを個人でも比較的手軽に使える時代です。
本当に便利になりましたよね。
今回は3Dプリンターで作られた雄型と雌型を使用しました。
(この型は、私が作ったわけではありません…)
この2つの型の間に革を挟み込み、革を立体的に成型していきます。
今回使用した革は1.3mmのグレージングレザー
今回、立体成型する部分には約1.3mm厚のグレージングレザーを使っています。

なぜこの革を使ったかというと、完成時に組み合わせるイタリアンレザーやスタンピングした革との相性を考えてのことです。
表面にほどよい光沢があり、仕上がったときにも上品な雰囲気になります。
革はビショビショにする必要があるのか?
SNSなどで立体成型の動画を見ていると、水を張ったボウルなどに革をそのまま漬け込んで、革全体をかなり濡らしている作り方を見かけることがあります。
もちろん、これは間違いというわけではありません。
厚くて硬い革を使う場合や、もっと複雑で深い立体形状を出したい場合には、革の芯までしっかり水分を入れる必要があると思います。
ただ、今回使用している革は約1.3mm。
そして作る形も、それほど複雑な形状ではありません。
なので今回は、革を水に漬け込んでビショビショにすることはしません。
床面から少量の水分を入れる程度にしています。
そもそも今回使っている革はグレージング加工されているため、銀面、つまり革の表側からは水分が入りにくくなっています。
さらに、せっかくのグレージングレザーを必要以上に濡らしてしまうと、光沢感が少し落ちたり、グレージング特有のツルッとした表情が弱くなったりする可能性があります。
なので今回は、必要な分だけ水分を入れるという考え方です。
水は床面から少しずつ
今回はスポンジを使って、床面全体に少量ずつ水分を入れていきます。

僕の場合は、一気に濡らすというより、
「革が少し柔らかくなって、型に馴染みやすくなればOK」
くらいの感覚です。
水分を入れたら、革を型にセットします。
そしてクランプを使って、しっかりと圧力をかけます。

この状態で革に形を覚えさせていきます。
そして型から外すと……

どうでしょう。
ちゃんと丸みのある立体的な形になっていますよね。
今回のような厚みと形状であれば、革を完全に水へ浸けなくても十分に成型できます。
むしろ革によっては、必要以上に水を入れることで、元々持っていた表情やツヤを損なってしまうこともあります。
なので僕は、
「立体成型=とにかく革をビショビショにする」
というよりも、
革の種類、厚み、作りたい形に合わせて水分量を調整する
という考え方のほうがいいと思っています。
もちろん、しっかり濡らして立体成型するのであれば、カービング用のヌメ革やタンローなどは非常に相性がいいと思います。
水分を入れることで革が素直に伸び、乾燥するとしっかり形が残ります。
革によって作り方を変えるのもレザークラフトの面白さ
同じ「革」と言っても、硬さも違えば、厚みも違います。
表面加工も違いますし、水の入り方も全然違います。
だからこそ、
「このやり方が絶対に正解」
というより、
使う革に合わせて作り方を変えていくことが大切なのかな
と思っています。
今回はグレージングレザーだったので、なるべく表面の雰囲気を残しながら、必要最低限の水分で成型しました。
結果として、ツヤ感も残しつつ、ペンをしっかり包み込める立体的な形に仕上げることができました。
こういう小さな工夫を考えながら作る時間も、レザークラフトの楽しいところですね。
それでは今日はこの辺で。
また次回のブログでお会いしましょう。




